共通テストの場合には、答えはいくつかの選択肢から選ぶことになります。
先の記事から「単位」で、可能性を絞ることが出来ることをご説明しました。
今回は「物理的直感」から答えを絞る方法についてご説明しましょう。
具体的な問題を示した方が分かりやすいでしょう。
これは 2018年本試験の 第1問 問1 です。
![](https://xn--48s2gy3e3o20y3dq28go4c.online/wp-content/uploads/2023/12/スクリーンショット-2023-12-06-19.03.03-2-960x1024.png)
問題は「衝突後の運動エネルギー」を求めよ。です。
答えの選択肢を見てみると、全て「運動エネルギー」の単位を持っているので、「単位」で答えを絞ることは出来ません。
このような場合でも「物理的直感」から答えを絞ることが出来ます。
まず、$m$ が $M$ より非常に大きく $M$ がほとんど無視できる場合を考えてみましょう。
すなわち $m \ll M$ の場合を考えます。もしくは $M = 0$ の場合を考えても良いでしょう。
まず $M = 0$ としたとき、衝突は起こってないのと同じですから、運動エネルギーは、衝突前後で変わるはずがありません。すなわち、衝突後も $\frac{1}{2}m v^2$ のはずです。
答えの選択肢を見てみましょう。
①、④、⑥、⑦、⑨はすべて $M \to 0$ としたときに 0 となる答えですので、物理的に考えておかしいです。
これで、選択肢の半分以上が消せました。
残された、②、③、⑤、⑧を各々吟味してみましょう。
まず、②は衝突の前後で運動エネルギーが変化しないと言っている答えです。
今、$m$ と $M$ は衝突後くっついているので、衝突係数 $e = 0$ の「非弾性衝突」です。
従って、エネルギーは衝突の後、減っているはずです。
従って、②は答えではありません。
次に③を考えましょう。
これは、衝突の後運動エネルギーが $\frac{1}{2}M v^2$ だけ増えていることを表しています。
衝突で運動エネルギーが減ること(非弾性衝突)や変わらないこと(弾性衝突)はあっても、増えることはあり得ません。従って、これも答えではありません。
残されたのは、⑤と⑧です。これは分母の2だけが違うだけで、どちらが正解か選ぶのが難しいと思われるかもしれません。しかし、ここでも「物理的直感」を働かせましょう。
最初の $M = 0$ の場合を考えるのです。
そうすると⑤は $\frac{m v^2}{2}$ となり、⑧は $m v^2$ となります。
つまり、⑧は衝突の後、エネルギーが衝突前の2倍になって増えています。
これは物理的におかしいです。
従って、答えは⑤であるはずです。
実際に答えは⑤です。
このようにして、様々な物理量が大きい極限や小さい極限などを考えることにより、物理的にあり得ない答えを選択肢から消すことが出来て、時には、この問題のように1つに絞ることさえできるのです。
それも全く計算せずに。
もちろん、ちゃんと計算して答えを求めることは大切です。
しかし、そのようにして得られた答えが、「物理的直感」に反していないか?チェックすることで、計算ミスを見つけることができます。
このようなテクニックもぜひ使ってみて下さい。