共通テスト過去問

2023年【物理】本試験 第1問 問2

これは熱力学の問題ですね。

A から B は熱の出入りがないようにして膨張させているので、「断熱膨張過程」です。
この時の気体の内部エネルギーの変化は、$\Delta Q$ を「加えた」熱量、$\Delta W$ を「された」仕事とすると
$$\Delta U = \Delta Q + \Delta W$$
となりますが、熱の出入りがないので $\Delta Q_{A\rightarrow B} = 0$ です。
また、今、体積が増えているので気体が仕事をしています。つまり、$\Delta W_{A\rightarrow B} < 0$ となっています。 従って、温度はこの過程で下がっています。

B から C は定積変化で圧力を高くしています。
体積が変わらないので、気体は仕事をされてもいないし、してもいません。つまり $\Delta W_{B\rightarrow C} = 0$ です。

C から A は等温圧縮過程です。
気体の内部エネルギーは温度によって決まるので、C と A で温度が同じなので C と A のエネルギーは同じです。
すなわち、 $\Delta U_{C\rightarrow A} = 0$ です。

ここまで整理した段階で、もう一度、図2を見てみましょう。
A -> B -> C -> A と1サイクルしたときに気体は、仕事を「されて」います。
なぜなら、A -> B の曲線より C -> A の曲線の方が上にあるので、この差の面積の分だけ気体は仕事を外部からされています。
すなわち、気体がされた仕事の総和は「正」です。

また、理想気体を考えているので、状態方程式 $PV = nRT$ が成り立つと考えられるので、A 点では $P, V$ が等しいので温度が等しいはずです。
ということは、サイクルの最初と最後で内部エネルギーの変化はないはずです。なぜなら、内部エネルギーは気体の温度で決まるからです。
そうすると、$\Delta U_{A\rightarrow A} = 0 = \Delta Q + \Delta W$ で、$\Delta W < 0$ なので、$\Delta Q > 0$ のはずです。
すなわち、加えた熱量が正です。ということは、気体は熱を吸収したということになります。

まとめると、サイクルを一周する間、気体の内部エネルギーは「変化するがもとの値になる」③で、
気体がされた仕事の総和は負であり、気体が吸収した熱量の総和は正です。

気体がした仕事とされた仕事、気体が吸収した仕事と放出した仕事の区別をすることが正解に辿り着く方法です。
また、気体の内部エネルギーは温度で決まるということがポイントです。